#3000文字チャレンジ テーマ【締め切り】
これは#3000文字チャレンジブログの記事です。
内容は全てフィクションです。
私があなたに初めて会ったのは1976年のことでしたね。
そのころの私は、ゴルゴ13を描いていたさいとうたかを先生に憧れていました。
そのため、さいとう先生のようなシリアスな絵で戦争を題材にした重い内容の漫画などを描いては新人賞などに応募していましたが、なかなか目が出ませんでした。
自分の作品について、何をどう描きたいのかわからずもがき苦しんでしたときに、ふと頭によぎったのがシリアスな絵でギャグ漫画を描いたら面白くないだろうかということ。
そこから構想は一気に膨らみ、ならばいっそ現実ではありえない、不真面目なバイオレンス警官という設定が浮かんできました。
そこで生まれたのがあなたです。
その時は、まさかその先40年も付き合っていくことになるとは想像もせず、あなたという破天荒なキャラと一緒に歩み始めました。
出会った頃のあなたは、酒、たばこ、ギャンブルが大好きでなバイオレンス警官でしたが、回を重ねるごとに変わっていき、いつの間にか下町人情お巡りさんになってましたね。
これも時代の変化ということでしょう。
当時から中年だったあなたと違い、私は若かったこともあって連載を開始したときは、本名ではなく【山止(やまどめ)たつひこ】というペンネームを使っていたのを覚えていますか?
このペンネームは、週間少年チャンピオンに連載していた同じ警官が主人公のギャグ漫画「ガキでか」の作者【山上(やまがみ)たつひこ】先生の【上】の字に線を1本つけ足した名前でしたね。
結局、このペンネームは連載100回までしか使いませんでしたが、あなたはこのペンネームをどう思っていたんでしょうか。
もしかしたら、同じ警官の漫画というだけでそんな名前を使いおって!と思っていたかもしれませんね。
そういえば、あなたの苗字をどのように決めたかってことを話したことがありませんでしたよね。
今更ですが、話しておきましょう。
まだあなたと出会う前に私は体調を崩し、病院に通っていた時期がありました。
そのとき大変お世話になった看護師さんがいました。
お世話になったというより憧れだったかもしれませんが。
その方が佐渡島のとある港町のご出身だったことを知り、その町の名前をそのままあなたの苗字として使わせていただいたんですよ。
名前に関してははっきり言ってエピソードは何もありません。あなたというキャラクターが誕生したときにピンと閃いたというか、イメージが沸いたというか。
でもね、とにかくもうこれしかないってくらいピッタリとイメージにはまったと思ってますよ。
それは、その後のあなたの活躍をみればわかるはずですよね。
日本国民の多くがあなたの名前を憶えています。もちろん長い間あなたが頑張ってきたということもありますが、あなたのキャラクターと名前がイメージに合っていて覚えやすかったことも覚えてもらえた理由にの一つだと自負しています。
いい名前を付けることができて本当によかったと思ってますよ。
40年もの長い連載期間中は、いろいろなことがありましたね。
私が体調を崩し、入院したときは点滴を打ちながら執筆したこともありました。それでもなんとか締め切りに遅れることなく執筆できたのは、あなたから常にあふれ出ているバイタリティを作者である私がもらっていたからにほかなりません。
あなたは体の線が細い私と違い、ゴツゴツとしたゴリラみたいな体をいっぱいに使って作品の中をパワフルに駆けずり回っていました。
気づいていなかったと思いますが、そんなあなたの元気いっぱいな姿に私自身がいつも励まされていたんですよ。
それと、この作品のタイトルにかかわる大きな出来事もありましたね。
全国の【派出所】の名称が変わり、【交番】になってしまったことです。つまり【派出所】そのものがなくなってしまったわけです。さすがにこの時は作品のタイトルを変更すべきかどうか悩みました。
だって【派出所】がなくなってしまったんですから、後に作品を読む人たちは派出所って何、という疑問が浮かんでくるはずです。
つまり派出所とは何なのかが全く分からない世代の子供たちが、これからこの作品を読み継いでいくということです。
悩んだ末にタイトルは、やっぱりこのまま変更せずにいこうと決めました。
【派出所】を【交番】に置き換えてみましたが、イマイチしっくりせず別物の作品のように感じてしまったからです。
今となっては、この判断は正しかったなと思っていますよ。
そうそう。こんなこともありましたね。
ある日、自宅でいつものように郵便物をポストから取り出し、家の中に持ち帰って確認していたら、私宛ではない葉書が一葉紛れていました。
それは、あなたの勤務先とあなたの名前が書かれた一葉の葉書でした。
まさか郵便番号はおろか、住所も書かれていない葉書が来ることなど想像もしていませんでした。
日本の郵便局の優秀さにも驚きましたし、なんてシャレのわかる配達員さんなんだろうと感心した覚えがあります。
ただ、今の時代だったら、もしかしたら個人情報保護の観点から、私の元には届くとこはなかったかもしれません。
そういった意味ではあのころはつくづくいい時代だったなあと思いますね。
いろんなことがまだまだ雑な時代でしたが、今のネット社会のような窮屈さがなくミスや失言などもおおらかな気持ちで許してあげられる、そんな優しい時代でしたね。
そんな時代だったからこそ、あなたも思いっきり暴れまわっても許されてきたんでしょう。
もうあんな時代が来ることはないと思うと少し寂しい気がします。
いろんなことを経験しながらともに歩んできた40年でした。
あなたはきっとまだまだ走り続けることができるでしょう。
いや、まだまだ走り続けたいでしょうと言ったほうが正解かもしれませんね。
そしてまだまだやりたいこともたくさんあることでしょう。
心残りなこともあるかもしれませんが、不真面目だったはずのあなたが40年間にわたって有給休暇も取らずに活躍してきたことですし、この辺で有給休暇をとりませんか。
そして、二人で締め切りに追われる生活からしばらく離れてもいいころではないでしょうか。
子供たちを40年間の長きにわたって楽しませてくれたあなたの偉業は、ここで立ち止まったからといって決して色あせることはなく、個人的には国民栄誉賞を差し上げたいくらいの気持ちでいます。
流行に敏感で新しい楽しそうな物にはすぐに飛びつくあなたと一緒なら、どこまでも二人で走り続けることはできます。
しかし、一度離れてお互いにまた違う刺激を吸収してみるのもいいと思いませんか。
そして、再会したときには今までと違う面を見せてくれるあなたを楽しみにしたいと思っています。
そんな思いから、40年間続いたあなたとの歩みを一度止めようと決めたわけです。
ずっと一緒に歩んできたあなたならきっとわかってくれるでしょう。
そして、「いいよ。わかった」と笑顔で手を振り、楽しいことを探しに世界中を飛び回ることでしょう。
あなたとの別れに湿っぽいのは似合いませんね。
ここは、さらっと笑顔でサヨナラするのがいいでしょう。
40年間本当にありがとう!
あなたとの歩みをやめてからもう4年が経ちました。
あなたはこの長い長い有休中にどんな楽しい旅をしているんでしょうか。
きっと、その底抜けに破天荒なキャラクターで世界中の子供たちを楽しませていることでしょう。
また、自分自身も有給休暇を満喫しながら楽しんでいることでしょう。
いつか戻ってきたときには、また子供たちを楽しませてあげてくださいね。
ずっと待っていますよ。
ずっと。
「#3000文字チャレンジ」
公式アカウント:https://twitter.com/challenge_3000
公式WEBサイト:http://3000moji.com/
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